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研究内容

Ⅰ.口腔がんの臨床病理学的研究

 口腔がんの治療法を開発するための臨床研究を行っています。過去の多数の患者さんの病態、治療法と結果を分析し、最適と思われる治療法を検討、次の患者さんへと臨床応用していきます。分析や臨床応用をする場合、必要に応じて国内の多数の施設を共同で行うこともしばしばあります。以下に紹介する基礎研究と並んで、当講座の研究の中心となるものです。

Ⅱ.口腔がんの浸潤・転移モデルに関する研究

 実験動物に口腔がんを作成し転移を生じさせるのは従来困難とされてきました。われわれはこれまで口腔扁平上皮がん、唾液腺がん、悪性黒色腫などの動物転移モデルの作成に成功しました。また、試験管内で口腔がんの基底膜浸潤を再現する方法も開発しました。これらの実験モデルを用いて、口腔がんの浸潤・転移の機序の解明や、浸潤・転移抑制のための治療法開発につながる基礎実験を行っています。

Ⅲ.口腔がんの分子標的治療開発に関する研究

 口腔がんの浸潤・転移に関与する因子にはさまざまなものがありますが、われわれはこれまで癌細胞の浸潤・転移に関与する細胞骨格を構成するアクチンの束状化タンパク質であるα-actinin-4、アクチン関連足場タンパク質であるcortactinおよび、チロシンキナーゼと低分子量Gタンパク質活性化因子をリンクするアダプター因子であり、細胞の増殖、運動、接着を制御し、がんの浸潤・転移に関与するとされるCT10 regulator of kinase (CRK)Ⅱなどが口腔扁平上皮がんの浸潤・転移に強く関わっていることを明らかにし、これらの分子が口腔がんの分子標的治療のターゲットとなりうる可能性を報告してきました。今後も口腔癌の浸潤・転移の抑制につながる分子標的薬の開発に関する研究を継続する予定です。

Ⅳ.口腔がんにおける癌幹細胞の研究

 癌幹細胞は他の腫瘍細胞と比較して、自己複製能、多分化能と腫瘍形成、維持能が高く抗癌薬および放射線に抵抗性を示すとされています。具体的には、がん治療の臨床では抗癌薬や放射線治療によって腫瘍が消失しても、治療後に再発あるいは転移を起こすことがあり、その原因は組織内に取り残された癌幹細胞にあると考えられています。したがって、癌幹細胞を標的とした治療の有効性が期待されています。われわれは口腔がん培養細胞から、この癌幹細胞を多く含むSide population細胞を分離し、その細胞生物学的特性を解析することにより口腔がん治療の新たな治療戦略を開発するべく研究を行っています。

Ⅴ.口腔がんにおけるmicroRNAの研究

 microRNAは18-25ヌクレオチドからなる1本鎖ノンコーディングRNAで、最近ではその機能異常とがんとの関連について注目されています。われわれは口腔がんにおけるmicro RNA発現について検討し、がん細胞浸潤との関連性を見出すことができました。現在は、その分子機構を明らかにしつつ標的を予測し、口腔がん治療法開発につながる研究を行っています。

Ⅵ.口腔がんにおける薬物代謝酵素の研究

 口腔がんの治療においては、症例に応じて抗がん薬が使用される場合があります。がんの種類や性質などによりその治療効果には個人差がみられ、抗がん薬を代謝する酵素が、影響を与えている可能性のあることが示唆されています。われわれは、口腔がんの治療で頻用される薬剤のうち、主として5-FU系薬剤に関する酵素について、免疫組織化学的、細胞生物学的ならびに分子生物学的手法を用いて検討を行い、より効果的な抗がん薬の使用をめざして研究を行っています。

Ⅶ.低酸素環境下におけるがん細胞に関する研究

 通常、細胞が生きていくうえには十分な酸素や栄養が必要ですが、腫瘍細胞には低酸素環境下でも生存が可能な細胞が存在し、特にがんにおいては、成長して局所進行がんの時期になると、一部のがん細胞は低酸素状態になることが知られています。低酸素環境に曝されたがん細胞は、自身の置かれた環境を改善するため、腫瘍内に新たな血管系を誘導します。そのような細胞は一般に悪性度が高いとされ、治療抵抗性や転移などに関与していることが考えられています。われわれは、実際のがんから得られた検体や培養細胞を用いて、低酸素環境下で生存可能な細胞に関する研究とそれをターゲットとした治療に関する研究を行っています。

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