長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科
展開医療科学講座 口腔腫瘍治療学分野
Department of Clinical Oral Oncology, Unit of Translational Medicibe,
Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences
長崎大学病院 口腔外科
Department of Oral Surgery, Nagasaki University Hospital
患者さまへ 診療内容について
良性腫瘍
●良性腫瘍とは
顎口腔領域にはさまざまな良性腫瘍が発生しますが、ここではそのうち頻度の高いものをいくつか紹介します。
Ⅰ.エナメル上皮腫
歯原性腫瘍(歯を形成する組織由来の腫瘍)の一つで、顎骨に発生する良性腫瘍の中では後述の歯牙腫と並んで最も頻度の高いものです。20~30歳台に好発し、下顎臼歯部、特に親知らずのあたりにみられることが多いです。症状としては顎の無痛性腫脹が多く、歯科医院で撮影されたX線写真で偶然見つかることもしばしばあります。X線では境界明瞭な単胞性または多胞性の透過像を示し、しばしば埋伏歯を伴います。治療法は手術を行います。以前は悪性腫瘍に準じて顎切除+骨移植が行われてきましたが、現在ではこの病気で顎の骨を切除することはほとんどありません。口腔内より腫瘍のみを摘出するか、大きくて一度に摘出が困難な場合は何度かにわけて摘出(反復療法)し、自分の骨の再生を促す方法が一般的です。局所再発も少なくなく、長期間の経過観察が必要です。
図1 エナメル上皮腫
Ⅱ.歯牙腫
歯原性腫瘍の一つで、歯胚の形成異常からなると言われています。若年者に好発し、臨床的には疼痛などの症状に乏しく、歯科医院で撮影されたX線写真で偶然発見されることも多いです。治療はそのまま経過観察することもありますが、永久歯の萌出の妨げになる場合や、歯並びを乱す原因となる場合には、外科的に摘出します。摘出後の再発はほとんどありません。
図2 歯牙腫
Ⅲ.血管腫
口腔領域の血管腫はほとんどの場合真の腫瘍ではなく、血管奇形と呼ばれる一種の血管の形成異常と考えられています。口腔内では舌や口唇などに好発します。小児期より認められ成長とともに増大しますが、成人後はあまり変化はみられません。しかしまれに徐々に増大し摂食障害や呼吸困難をきたすケースもあります。 治療法は、特に障害にならない場合そのまま経過観察としますが、審美障害、摂食障害、あるいはしばしば出血を伴う場合などには、血管腫の存在場所や大きさなどに応じて、外科的切除、硬化療法、レーザー深部凝固療法などを行います。
図3 血管腫
Ⅳ.その他
顎口腔領域には乳頭腫、線維腫、脂肪腫、筋腫、神経鞘腫、骨腫、軟骨腫、唾液腺腫瘍など、さまざまな良性腫瘍が発生します。また、エプーリス(歯肉の炎症性の腫瘍)(図4)や口蓋隆起・下顎隆起(骨の過形成)(図5)などの腫瘍類似疾患もしばしばみられます。いずれも単純な外科的摘出で再発もなく良好な結果が得られますので、気になる方はご相談ください。
図4 エプーリス
図5 口蓋隆起